土地改良区/借入金の一連の会計処理について
土地改良区の借入金に関する会計処理について、以下の1.から4.までの一連の会計処理、5.繰上償還をした場合の会計処理について整理しました。少しでも参考になれば幸いです。
- 借入時の会計処理
- 返済時の会計処理(借入年度)
- 決算時の会計処理
- 返済時の会計処理(借入年度の翌年度以降)
- 繰上償還をした場合の会計処理
なお、勘定科目は土地改良区会計基準(農振第2938号 平成31年2月14日)別表第1により選定しています。また、財務諸表等作成要領も合わせて参考にしてください。
1.借入時の会計処理
- 取引例:令和4年10月1日に、○○銀行から5,000,000円を借り入れた。返済計画表は以下の通り。
返済予定日 | 元本(円) | 利息(円) | 返済後残高(円) |
令和5年2月1日 | 1,000,000 | 12,500 | 4,000,000 |
令和6年2月1日 | 1,000,000 | 40,000 | 3,000,000 |
令和7年2月1日 | 1,000,000 | 30,000 | 2,000,000 |
令和8年2月1日 | 1,000,000 | 20,000 | 1,000,000 |
令和9年2月1日 | 1,000,000 | 10,000 | 0 |
- 命令書:収入命令書
- 収支仕訳:
- 収入金額:5,000,000円
- 収入科目:(款)借入金収入(項)その他の借入金収入
- 複式簿記仕訳:
- 金額:5,000,000円
- 借方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 貸方:(款)固定負債(項)その他の長期借入金
- 解説:
- 日本政策金融公庫から借り入れた場合と、日本政策金融公庫以外の金融機関から借り入れた場合の科目が異なるため注意が必要です。(土地改良区会計基準 別表第1 参照)
- 借入時に、短期借入金と長期借入金に分ける必要はありません。(あくまで借入額の全額を長期借入金として処理します。)
2.返済時の会計処理(借入年度)
(1)元本分の処理
- 取引例:令和5年2月1日に、1.の借入金について、返済予定表に基づき元本1,000,000円、利息12,500円を支払った。(元本分の処理)
- 命令書:支出命令書
- 収支仕訳:
- 支出金額:1,000,000円
- 支出科目:(款)借入金返済支出(項)その他の借入金返済金支出
- 複式簿記仕訳:
- 金額:1,000,000円
- 借方:(款)固定負債(項)その他の長期借入金
- 貸方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 解説:
- 元本と利息は分けて処理します。
- 借入年度に支出がある場合は、借入時の科目((款)固定負債(項)その他の長期借入金)で処理します。(短期借入金を使う必要はありません。)
(2)利息分の処理
- 取引例:令和5年2月1日に、1.の借入金について、返済予定表に基づき元本1,000,000円、利息12,500円を支払った。(利息分の処理)
- 命令書:支出命令書
- 収支仕訳:
- 支出金額:12,500円
- 支出科目:(款)支払利息(項)借入金利息(目)その他の借入金
- 複式簿記仕訳:
- 金額:12,500円
- 借方:(款)支払利息(項)借入金利息(目)その他の借入金
- 貸方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 解説:
- 元本と利息は分けて処理します。(元本分と一緒にしないように注意)
3.決算時の会計処理
- 取引例:令和5年3月31日決算において、翌年度(令和5年度)に返済予定の1,000,000円を長期借入金から短期借入金に振り替える。
- 命令書:振替命令書
- 収支仕訳:仕訳なし
- 複式簿記仕訳:
- 金額:1,000,000円
- 借方:(款)固定負債(項)長期借入金(目)その他の長期借入金
- 貸方:(款)流動負債(項)短期借入金
- 解説:
- 決算において、長期借入金のうち翌年度返済予定分を固定負債から流動負債へ振り替えます。
- 翌年度返済予定額は、金融機関の返済予定表等を参考にします。
- 金額は元本分だけです。(利息はあくまで各会計年度における期間費用ですから、貸借対照表には影響させません。)
4.返済時の会計処理(借入年度の翌年度以降)
(1)元本分の処理
- 取引例:令和6年2月1日に、1.の借入金について、返済予定表に基づき元本1,000,000円、利息40,000円を支払った。(元本分の処理)
- 命令書:支出命令書
- 収支仕訳:
- 支出金額:1,000,000円
- 支出科目:(款)借入金返済支出(項)その他の借入金返済金支出
- 複式簿記仕訳:
- 金額:1,000,000円
- 借方:(款)流動負債(項)短期借入金
- 貸方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 解説:
- 元本と利息は分けて処理します。
- 借入年度の翌年度以降は、(款)流動負債(項)短期借入金 で処理します。
(2)利息分の処理
- 取引例:令和6年2月1日に、1.の借入金について、返済予定表に基づき元本1,000,000円、利息40,000円を支払った。(利息分の処理)
- 命令書:支出命令書
- 収支仕訳:
- 支出金額:40,000円
- 支出科目:(款)支払利息(項)借入金利息(目)その他の借入金
- 複式簿記仕訳:
- 金額:40,000円
- 借方:(款)支払利息(項)借入金利息(目)その他の借入金
- 貸方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 解説:
- 元本と利息は分けて処理します。(元本分と一緒にしないように注意)
- 利息の処理は上記2.(2)の考え方と同様です。
5.繰上償還をした場合の会計処理
(1)元本分の処理
- 取引例:令和6年2月1日に、1.の借入金について繰上償還することとした。元本4,000,000円、利息40,000円を支払った。(元本分の処理)
- 命令書:支出命令書
- 収支仕訳:
- 支出金額:4,000,000円
- 支出科目:(款)借入金返済支出(項)その他の借入金返済金支出
- 複式簿記仕訳(当初返済予定分):
- 金額:1,000,000円
- 借方:(款)流動負債(項)短期借入金
- 貸方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 複式簿記仕訳(繰上償還分):
- 金額:3,000,000円
- 借方:(款)固定負債(項)長期借入金(目)その他の長期借入金
- 貸方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 解説:
- 元本と利息は分けて処理します。
- 貸借対照表の短期借入金には、当初の返済予定分しか計上されていないため、繰上償還をした場合は、当初の返済予定分の科目(流動負債)と繰上償還分の科目(固定負債)が異なるため、複式簿記上は分けて処理する必要があります。
(2)利息分の処理
- 取引例:令和6年2月1日に、1.の借入金について繰上償還することとした。元本4,000,000円、利息40,000円を支払った。(利息分の処理)
- 命令書:支出命令書
- 収支仕訳:
- 支出金額:40,000円
- 支出科目:(款)支払利息(項)借入金利息(目)その他の借入金
- 複式簿記仕訳:
- 金額:40,000円
- 借方:(款)支払利息(項)借入金利息(目)その他の借入金
- 貸方:(款)流動資産(項)現金及び預金
- 解説:
- 元本と利息は分けて処理します。(元本分と一緒にしないように注意)
- 利息の処理は上記2.(2)の考え方と同様です。
6.まとめ
ここまで借入金に関する会計処理について解説してきましたが、処理が誤っていた事例や、よくご質問を頂く内容を中心にポイントまとめると以下の通りです。
- 元本と利息を分けて処理すること。
- 貸借対照表、財産目録に計上される借入金の残高はあくまで元本分だけであること。
- 借入先が日本政策金融公庫か、日本政策金融公庫以外かで科目が異なること。
【参考】
- 土地改良区会計基準(30農振第2938号 平成31年2月14日)
- 財務諸表等作成要領
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