フリーランス向け|簡易課税の事業区分の判定事例

フリーランス・個人事業主向け簡易課税ガイド。Web制作、ネットショップ運営、ハンドメイド小物販売、軽貨物輸送、コンサルタント等のフリーランスに多い業種を第1種事業~第6種事業に区分判定。実務で重要な「取引単位」 「対価区分」 「証憑の残し方」 の考え方を解説します。
なお、本記事で例示する事業区分は一般的な解釈に基づき分類した「目安」です。簡易課税の事業区分は、個々の取引の実態・契約内容・請求書の区分(対価の内訳)によって結論が異なる場合があります。申告にあたっては、必ず最新の法令・国税庁公表資料等をご確認のうえ、必要に応じて専門家または所轄税務署へご相談ください。
本記事の情報に基づくいかなる判断についても、当事務所は一切の責任を負いかねます。
Contents
フリーランス向け|簡易課税の事業区分の判定(結論)
- 判定は「取引単位」で行う:「Web制作者」や「コンサルタント」といった屋号や職種単位ではなく、請求する売上(取引)の性質ごと に第1種事業~第6種事業を判定します 。
- フリーランスの主要区分(目安):Web制作・コンサルタント・SNS運用・軽貨物などの「役務提供」は第5種事業、仕入れた商品のネット販売は第1種事業または第2種事業、自作のハンドメイド品販売は第3種事業(製造小売)が基本です。
- 2つの重要な例外:PC・カメラ・車両など事業用の「固定資産の売却」は、本業に関わらず第4種事業 。教材費や部品代が混在する取引は、「対価区分」の有無で判定方法が変わります 。
この記事の想定読者/到達目標
想定読者:
フリーランス/個人事業主/小規模法人の実務担当
到達目標:
売上等の種類ごとに第何種事業かを自力で判定し、証憑と集計で裏づけできる。
1. フリーランスのための簡易課税の事業種類の判定の原則(要点)
- 事業者単位ではなく取引単位で判定します。
- 事業区分が混合している取引は、事業ごとに対価区分が明確になっている場合はその対価区分ごとに判定、対価区分が明確でない場合は主たる取引で一体で事業区分を判定します。
- 事業区分の記録方法:帳簿・請求書・伝票・POS印字・事業場別など、客観的に区分できる状態で記録し、確定申告時に事業区分別に集計できるようにしておきましょう。
- 固定資産の売却は本業の内容に関わらず第4種事業に該当します。
2. フリーランス向け|簡易課税の業種区分の判定事例
注意
ここで紹介する簡易課税の業種区分の判定事例はあくまで一般的な解釈に基づき分類した「目安」です。簡易課税の事業区分は、個々の取引の実態・契約内容・請求書の区分(対価の内訳)によって結論が異なる場合があります。申告にあたっては、必ず最新の法令・国税庁公表資料等をご確認のうえ、必要に応じて専門家または所轄税務署へご相談ください。
物品販売業(第1種事業・第2種事業)
ネットショップ運営(仕入販売/転売)
事業区分:第2種事業(消費者向け)/第1種事業(事業者向け)
考え方:無加工の販売は卸売業/小売業
注意:相手が事業者と確認できれば第1種。会員区分・請求先で区分を明確化。
美容室等の物品販売
事業区分:第2種事業(消費者向け)/第1種事業(事業者向け)
考え方:技術提供と別取引の物品販売業。
注意:技術料と物品販売売上を分けて管理。
製造業・建設業(第3種事業)
ハンドメイド作家(自作の販売)
事業区分:第3種事業(製造小売)
考え方:自ら製作した物の販売は製造を含む。
注意:仕入商品の無加工転売は第1種事業または第2種事業。
個人リフォーム業(工務店・内装)
事業区分:第3種事業
考え方:建設業は第3種事業。元請・下請を問わず工事請負は建設。
注意:材料無償支給の場合は加工賃を対価とする役務の提供に該当し第4種事業。
飲食店業(第4種事業)
カフェ
事業区分:第4種事業(店内飲食)/第3種事業(自製商品持ち帰り)/第2種事業(仕入販売)
考え方:飲食店業は第4種。持ち帰り販売は商品の性質により第3種事業または第2種事業。
注意:事業区分が複数にわたり、かつ税率も標準税率・軽減税率が混在するため伝票等で管理。
サービス業(第5種事業)
Web制作・デザイン(受託)
事業区分:第5種事業
考え方:制作・保守等は役務提供。
SNS運用代行・広告運用・コンサル
事業区分:第5種事業
考え方:サービスの提供。
写真・動画の撮影/編集(納品まで)
事業区分:第5種事業
考え方:撮影・編集はサービスの提供。
注意:アルバム等の物品販売は第1種事業または第2種事業、制作物の製造販売なら第3種事業の可能性。
軽貨物ドライバー(宅配委託等)
事業区分:第5種事業
考え方:運輸業は第5種事業。
パーソナルトレーナー/オンライン講座
事業区分:第5種事業
考え方:教育・学習支援サービスに該当。
注意:教材同梱は、対価区分が明確である場合は教材は物品販売業、対価区分が明確でない場合は全額第5種事業が一般的。
美容室・理容・ネイル
事業区分:第5種事業
考え方:生活関連サービスに該当。
注意:店舗による物品販売は第1種事業または第2種事業で区分。
デジタル素材販売(プリセット・フォント等のダウンロード・許諾)
事業区分:第5種事業
考え方:情報の提供・使用許諾はサービス業に該当。
注意:物理媒体での販売は自作の場合は第3種事業、仕入転売の場合は第1種事業または第2種事業に区分。
ライター・編集・翻訳・通訳
事業区分:第5種事業
考え方:原稿作成・編集・翻訳・通訳はサービス業に該当。
インフルエンサー・配信者(PR投稿・スポンサー・投げ銭・メンバー)
事業区分:第5種事業
考え方:広告・情報提供等のサービス。
注意:物品販売がある場合は区分。
清掃・ハウスクリーニング/便利屋/修理(スマホ・時計等)
事業区分:第5種事業
考え方:清掃・修繕等のサービス。
注意:部品・消耗品代は対価区分が明確である場合は第1種事業または第2種事業、対価区分が明確でない場合は全額第5種事業が一般的。
機材レンタル(カメラ・照明・工具等)
事業区分:第5種事業(物品賃貸業)
考え方:物品賃貸業は不動産業とは異なり、第5種事業。
イベント出店(物販+ワークショップ)
事業区分:第5種事業+物販(第1種事業/第2種事業/第3種事業)の複合
考え方:講座・体験は役務(第5種事業)。材料・作品販売は実態で物品販売業または製造小売業に。
注意:対価区分が重要。対価区分が明確でなければ主たる取引で一体判定。
不動産業(第6種事業)
スペースレンタル(スタジオ・会議室・時間貸し)
事業区分:単なる不動産の貸付は第6種事業/施設利用サービス型は第5種事業
考え方:建物の賃貸は第6種事業(住宅の貸付は原則非課税)。一体の運営・スタッフ・機材提供等はサービス提供に該当し第5種事業。
4. よくある誤り
- 屋号の主な事業で決めてしまう。 → 正しくは各売上の取引単位で判定。
- 小売を全部第2種事業にしてしまう。 → 正しくは相手が事業者と確認できれば第1種事業。
- 教材同梱があれば常に物品販売業と判定してしまう。 → 正しくは対価区分の有無で判定。明確な区分なしなら主たる取引の事業区分(多くは第5種事業)。
- 自社の車・機材の売却を本業の事業区分で判定してしまう。 → 正しくは固定資産売却は第4種事業。
5. FAQ
Q1. ひとり事業でも区分は必要?
A1. 必要です。事業者単位ではなく取引単位で区分します。
Q2. 受託制作+テーマ販売が混在。どう管理?
A2. 取引を会計ソフト等に税区分で分けて記録し、区分別に集計します。
Q3. 物販とワークショップのセット料金は?
A3. 対価の明確な区分ありなら要素ごとに、明確な区分なしなら主たる取引で一体で判定。
6. 終わりに(まとめ)
フリーランスの簡易課税は、事業区分の判定で納税額が変わります。重要なのは、①職種ではなく「取引単位」で考えること 、②複数事業の混合取引は「対価区分」が明確かどうかで処理すること 、③事業区分を帳簿等で分けて記録しておくことの3点です。
本記事で紹介した事例は、一般的な解釈に基づき分類した「目安」に過ぎません 。取引の実態により結論が変わることがあるため、迷う場合は専門家または所轄税務署へご相談ください。
なお、簡易課税の事業区分に関する全般的な考え方や、国税庁の質疑応答事例、フローチャートなどは以下の記事で整理しています。合わせて参考にしてください。
7. 関連内部リンク
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