社会福祉法人/私立保育園は余剰金の過大保有に注意

 

私立保育園は市町村から委託費を受け、保育園の事業に係る人件費、管理費又は事業費に充てて運営していますが、この委託費については、適正な保育所運営のために、過度な節約などによる余剰金の過大な保有はできないことになっています。

このルールは30%ルールと言われますが、このルールについて解説します。

 

30%ルールの概要

具体的には、当該年度の当期末支払資金残高は、当該年度の委託費収入の合計の30%以下としなければなりません

  • 当該年度の委託費収入合計…(1)
  • 当該年度の当期末支払資金残高…(2)
  • (1)×30% ≧ (2)

 

確認方法

計算書類のうち、当該保育園の拠点区分又はサービス区分の資金収支計算書を使い計算します。

 

  • (例)ルールに違反しないケース
    • 当該年度の委託費収入合計…100,000,000円…(1)
    • 当該年度の当期末支払資金残高…25,000,000円…(2)
    • (1)×30%=30,000,000 > (2)=25,000,000 ∴要件を満たすためOK

 

  • (例)ルールに違反するケース
    • 当該年度の委託費収入合計…100,000,000円…(1)
    • 当該年度の当期末支払資金残高…35,000,000円…(2)
    • (1)×30%=30,000,000 < (2)=35,000,000 ∴要件を満たさないためNG

 

このように、委託費収入の合計に30%を乗じた額と、当期末支払資金残高を比較し、ルールに抵触していないかどうかチェックします。

 

30%ルールに違反した場合のペナルティ

このルールに違反した場合は、委託費に上乗せされている改善基礎分全額について加算を停止されることがありますので、注意が必要です。(年間に換算するとかなりの額になる場合が多い。)

 

30%ルールに違反しないための対策

委託費の適切な執行をした上で、さらに余剰金が発生しそうな場合には、以下の手順で当期末支払資金残高を減らすことが必要です。

 

  1. 決算前(年度が終わる前の12月頃〜2月頃まで)に、年度末の委託費合計と当期末支払資金残高の見込みを把握
  2. 余剰金が発生しそうな場合には、必要に応じ各種積立資産(人件費積立資産、保育所施設・設備整備積立資産等)への積立資産積立支出の予算を増額補正する。(予算設定が無い支出はできないため、必ず予算化します。)
  3. 上記補正予算を決算前の理事会で承認する。(積み立てる旨、議事録にも残す。)
  4. 決算処理において、各種積立資産への振替処理を行う。(この処理で当期末支払資金残高を減少させ、委託費合計の30%以下に抑える。)
  5. 必要に応じ、決算理事会後2ヶ月以内に、上記振替処理を行った積立資産分のお金を別の通帳や定期預金へ資金移動する。※この資金移動を行うまでの間は、貸借対照表上の現金・預金の額と通帳残高に差異が発生しますが問題ありません。

 

なお、上記 4. の具体的な振替仕訳を示すと以下の通りです。(◯◯積立資産を¥100計上する例)

資金収支仕訳 事業活動仕訳
¥100 (◯◯積立資産積立支出)/(支払資金) ¥100 (◯◯積立資産)/(現金預金)
¥100 (◯◯積立金積立額)/(◯◯積立金)

 

 

年間の委託費に30%を乗じた結果と、当期末支払資金残高を比べるだけで分かる内容ですので、ルール違反とならないように必ずチェックするようにしておきましょう。

 

【参考】

  • 子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について(府子本第254号)
  • 社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

 

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