社会福祉法人/認定こども園の収入に係る会計処理について

 

認定こども園の収入科目は、科目の種類が多く、似ている名称の科目があるなど、複雑で誤りが多いと思われます。

そこで、認定こども園を運営する社会福祉法人の収入科目について整理してみました。

本記事が認定こども園を経営する社会福祉法人の適正な会計処理のために少しでもお役に立つことになれば幸いです。

(以下、ここで説明している科目名は、特に断りのない限り資金収支計算書の科目名を使用しています。)

 

1.社会福祉法人が運営する認定こども園の収入科目のまとめ(保育事業収入)

まずはじめに、社会福祉法人が運営する認定こども園が使用する収入科目についてまとめた表が以下です。(参考:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」)

大区分 中区分 小区分 説明 具体例
保育事業収入 施設型給付費収入 施設型給付費収入 施設型給付費の代理受領分をいう。 自治体から受領する施設型給付費
利用者負担金収入 施設型給付費における利用者等からの利用者負担金(保育料)収入をいう。 保護者から受領する保育料(保護者の所得によって変動)
利用者等利用料収入 利用者等利用料収入(公費) 実費徴収額(保護者が支払うべき日用品、文房具等の購入に要する費用又は行事への参加に要する費用等)にかかる補足給付収入をいう。 下記(利用者等利用料収入(一般)について、自治体が負担する場合(本来は保護者が負担すべき実費について、生活困窮などの事情により自治体が代わりに負担する場合)
利用者等利用料収入(一般) 実費徴収額(保護者が支払うべき日用品、文房具等の購入に要する費用又は行事への参加に要する費用等)のうち補足給付収入以外の収入をいう。 保護者から実費として受領する給食費、教材費、バス代など実費徴収に関するものすべて
その他の利用料収入 特定負担額(教育・保育の質の向上を図る上で特に必要であると認められる対価)など上記に属さない利用者からの収入をいう。 保護者から受領する上乗せ徴収分
その他の事業収入 補助金事業収入(公費) 保育所等に関連する事業に対して、国及び地方公共団体から交付される補助金事業収入をいう。 延長保育事業補助金、一時預かり事業補助金、放課後児童健全育成事業運営費補助金など(これらの事業が受託事業である場合は「受託事業収入(公費)で処理する)
補助金事業収入(一般) 保育所等に関連する事業に対して、国及び地方公共団体以外から交付される補助金事業収入をいう(共同募金からの分配金(受配者指定寄附金を除く)及び助成金を含む)。保育所等に関連する補助金事業に係る利用者からの収入も含む 延長保育料の保護者負担分、一時預かり保育料保護者負担分、学童保育料保護者負担分など(これらの事業が受託事業である場合は「受託事業収入(一般)で処理する)
受託事業収入(公費) 保育所等に関連する、地方公共団体から委託された事業に係る収入をいう。 子育て支援センター業務受託料など
受託事業収入(一般) 保育所等に関連する、受託事業に係る利用者からの収入をいう。 保護者が負担する子育て支援センター利用料など
その他の事業収入 上記に属さないその他の事業収入をいう。 延長保育、一時預かり保育などを補助事業等により実施しない場合の保護者から受領する延長保育料、一時預かり保育料など

 

上記は「保育事業収入」のみを掲載していますが、その他の認定こども園が使用する可能性がある事業活動収入の大科目として、「借入金利息補助金収入」、「経常経費寄附金収入」、「受取利息配当金収入」、「その他の収入」等があります。

この表からも分かるように、科目の種類が多く、名称が似ている科目もありとてもわかりにくいです。実際に初めて関与する認定こども園を運営している社会福祉法人の決算書を拝見すると、誤りも多く見受けられます。

 

 

2.保護者から受領する徴収額について

認定こども園で特に会計処理の誤りが多いのは保護者から直接受領する徴収額の処理科目です。科目の種類が多いことと、その徴収する内容によって処理パターンが多岐にわたることが原因と考えられます。

保護者から受領する徴収額の処理科目を整理すると以下の通りです。

上記の中で、「基準」とあるのは、「特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)」のことを指しています。また、(大)、(中)、(小)は、それぞれ(大区分)、(中区分)、(小区分)を意味します。

 

(1)保育料

保護者から受領する徴収額のうち、保育料(利用者負担額)については、「(小)利用者負担金収入」の科目を使用します。保護者の所得により変動する部分です。今は幼児教育無償化により、3歳以上児はゼロになっています。

認定子ども園では、公定価格から保護者が負担すべき利用者負担額が控除された金額を「(小)施設型給付費収入」として自治体から法定代理受領することになります。(「(小)施設型給付費収入」と「(小)利用者負担金収入」の合計が公定価格と一致することになるため、これらの科目が「(中)施設型給付費収入」の中でセットになっていると私は理解しています。)

「(小)利用者負担金収入」について、「(小)利用者等利用料収入(一般)」として処理しないように注意しましょう。「(小)利用者等利用料収入(一般)」は実費徴収額を処理する科目です。(科目名称が似ているので間違いやすいと思われます。)

(2)実費徴収額

保護者から受領する徴収額のうち、実費で徴収するものについては、「(小)利用者等利用料収入(一般)」の科目を使用します。具体的には、連絡帳ノートやのり、はさみ等の日用品や文房具などの購入費用、行事への参加などに要する費用、給食費、バス代などが該当します。

(3)上乗せ徴収

教育・保育の質向上の対価として実費徴収額以外の特定負担額を徴収するものについては、「(小)その他の利用料収入」の科目を使用します

(4)預かり保育料、一時預かり保育料など(補助事業等による場合)

補助事業又は受託事業として実施するサービスについて、保護者から当該事業の利用料を徴収する場合は、「(小)補助金事業収入(一般)」又は「(小)受託事業収入(一般)」の科目を使用します

これらの保育料を「(小)利用者負担金収入」として処理したり、「(小)利用者等利用料収入(一般)」、「(小)その他の利用料収入」などとして処理しないように注意しましょう。

また、少し話が変わりますが、自治体と受託契約を締結し実施している事業であるにも関わらず、当該事業に係る収入を「(小)補助金事業収入(公費)」として処理しているケースがよくありますが、受託契約を締結している場合は、「(小)受託事業収入(公費)」として処理する必要がありますので注意しましょう。補助金であれば補助金の交付決定通知書があるはずですし、受託金であれば業務委託契約書があるはずです。収入の根拠となる証拠書類を確認する必要があります。

 

 

3.特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準

参考までに「特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)」の利用者負担金等に関する条文を掲載します。(一部抜粋)

(利用者負担額等の受領)
第十三条 特定教育・保育施設は、特定教育・保育を提供した際は、教育・保育給付認定保護者(満三歳未満保育認定子どもに係る教育・保育給付認定保護者に限る。)から当該特定教育・保育に係る利用者負担額(満三歳未満保育認定子どもに係る教育・保育給付認定保護者についての法第二十七条第三項第二号に掲げる額をいう。)の支払を受けるものとする。・・・注 利用者負担額 「(小)利用者負担金収入」
2 特定教育・保育施設は、法定代理受領を受けないときは、教育・保育給付認定保護者から、当該特定教育・保育に係る特定教育・保育費用基準額(法第二十七条第三項第一号に掲げる額をいう。次項において同じ。)の支払を受けるものとする。
3 特定教育・保育施設は、前二項の支払を受ける額のほか、特定教育・保育の提供に当たって、当該特定教育・保育の質の向上を図る上で特に必要であると認められる対価について、当該特定教育・保育に要する費用として見込まれるものの額と特定教育・保育費用基準額との差額に相当する金額の範囲内で設定する額の支払を教育・保育給付認定保護者から受けることができる。・・・注 上乗せ徴収 「(小)その他の利用料収入」
4 特定教育・保育施設は、前三項の支払を受ける額のほか、特定教育・保育において提供される便宜に要する費用のうち、次に掲げる費用の額の支払を教育・保育給付認定保護者から受けることができる。・・・注 実費徴収 「(小)利用者等利用料収入(一般)」
一 日用品、文房具その他の特定教育・保育に必要な物品の購入に要する費用
二 特定教育・保育等に係る行事への参加に要する費用
三 食事の提供(次に掲げるものを除く。)に要する費用
 イ ・・・省略
 ロ ・・・省略
 ハ ・・・省略
四 特定教育・保育施設に通う際に提供される便宜に要する費用
五 前四号に掲げるもののほか、特定教育・保育において提供される便宜に要する費用のうち、特定教育・保育施設の利用において通常必要とされるものに係る費用であって、教育・保育給付認定保護者に負担させることが適当と認められるもの
5 ・・・省略
6 ・・・省略

 

 

4.まとめ

最後に、認定こども園が使用する収入科目をまとめた表を再掲します。(説明と具体例は省略)

大区分 中区分 小区分
保育事業収入 施設型給付費収入 施設型給付費収入
利用者負担金収入
利用者等利用料収入 利用者等利用料収入(公費)
利用者等利用料収入(一般)
その他の利用料収入
その他の事業収入 補助金事業収入(公費)
補助金事業収入(一般)
受託事業収入(公費)
受託事業収入(一般)
その他の事業収入

 

認定こども園では、各施設で定めている運営規程や重要事項説明書においても利用者負担額等の内容について定めているはずです。

運営規程や重要事項説明書を確認し、それぞれどの科目で処理すべきか確認してみてはいかがでしょうか。

 

 

【参考】

  • 社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
  • 特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)

 

 

<編集後記>

社会福祉法人立の認定こども園は、もともとは保育所であったところが多いと思われますが、認定こども園へ移行することにより、委託費の弾力運用等の資金運用ルール(いわゆる254号通知)の制約を受けずに済むメリットを享受する一方で、利用者負担金の徴収やその管理が必要となったり、今回のテーマである収入科目が複雑になるなどのデメリットが発生します。

行政による監査により、科目の処理が不適切であると指摘されても、具体的な解説や対応策を提示されないまま困り果てている社会福祉法人もあると思われます。(私が最近関与した社会福祉法人はまさにこのような状況でした。)

本記事が認定こども園を経営する社会福祉法人の適正な会計処理のために少しでもお役に立つことになれば幸いです。