社会福祉法人/社会福祉法人は税金を払う必要があるの?

 

社会福祉法人を取り巻く主な税金の納税義務について整理しました。

社会福祉法人は一般企業とは異なり、多くの税金で優遇措置がなされています。

なお、内容をできるだけわかりやすくするため、説明を簡略化しています。各税金について実際に優遇措置等を受ける際には、法令をご確認頂くか、関与税理士等に確認をお願いします。

 

社会福祉法人と法人税

社会福祉法人は、法人税法上の収益事業を行う場合についてのみ、当該収益事業から生じた所得に対して法人税が課税されます。(法人税法第4条1項)

なお、ここでいう収益事業とは、社会福祉法第26条で定める収益事業ではなく、法人税法第2条1項13号で定める収益事業のことをいいます。(社会福祉法上の収益事業と法人税法上の収益事業が必ずしも一致する訳ではありません。)

法人税法の収益事業には、例えば、物品販売業、不動産貸付業などがあり、34業種が定められています。(法人税法施行令第5条)

 

社会福祉法人と消費税

社会福祉法人は、消費税法上の事業者に該当するため、消費税の納税義務があります。(消費税法第5条1項)

ただし、基準期間(基本的に2事業年度前のこと)の課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者である場合には、別段の定めがある場合を除き、消費税の納税義務が免除されています。(消費税法第9条1項)

なお、社会福祉事業として行われる取引についてはそのほとんどが非課税とされている(消費税法第6条、別表第一)ため、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えず、消費税の納税義務が免除されている社会福祉法人が多いと考えられます。

 

社会福祉法人と印紙税

社会福祉法人の印紙税については、基本的に一般企業と同じ扱いですが、以下の点について特有の取り扱いがあります。

  • 社会福祉法人が作成する定款・・・株式会社(相互会社含む)に該当しないため非課税(印紙税法 別表第一 課税物件表 6号文書)
  • 社会福祉法人が発行する領収書・・・営業に関しない受取書に該当するため非課税(印紙税法 別表第一 課税物件表 17号文書)
  • 社会福祉法第二条第二項第七号に規定する生活困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業による貸付金に関する文書・・・非課税(印紙税法 別表第三 非課税文書の表)

 

社会福祉法人と登録免許税

社会福祉法人の設立等の登記

社会福祉法人の設立等の登記については、登録免許税法別表第一に掲げられていないため登録免許税は課されません。

社会福祉法人の不動産の登記

社会福祉法人の以下に掲げる不動産の登記については、登録免許税は課されないことになっています。(印税法第4条第2項、別表第三)

  1. 社会福祉事業の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該事業の用に供する土地の権利の取得登記(3.を除く。)
  2. 自己の設置運営する幼稚園の校舎等の所有権の取得登記又は当該校舎等の敷地、運動場、実習用地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記
  3. 自己の設置運営する保育所若しくは家庭的保育事業等の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育の用に供する土地の権利の取得登記
  4. 自己の設置運営する認定こども園の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記

なお、これらの非課税の適用を受けるためには、所轄庁が発行する登記対象の不動産が社会福祉事業の用に供するものであることの証明書が必要です。

 

社会福祉法人と不動産取得税

社会福祉法人が以下の用途で使用するために取得した不動産には、不動産取得税は課されないことになっています。(地方税法第73条の4第1項)

  • 保護施設の用に供する不動産で政令で定めるもの(第4号)
  • 小規模保育事業の用に供する不動産(第4号の2)
  • 児童福祉施設の用に供する不動産で政令で定めるもの(認定こども園の用に供する不動産を除く。)(第4号の3)
  • 認定こども園の用に供する不動産(第4号の4)
  • 老人福祉施設の用に供する不動産で政令で定めるもの(第4号の5)
  • 障害者支援施設の用に供する不動産(第4号の6)
  • 上記の不動産のほか、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業(認定生活困窮者就労訓練事業を除く。)の用に供する不動産で政令で定めるもの(第4号の7)
  • 更生保護事業の用に供する不動産で政令で定めるもの(第4号の8)
  • 介護保険法の規定により市町村から包括的支援事業の委託を受けた者が当該事業の用に供する不動産(第4号の9)
  • 事業所内保育事業の認可を得た者が当該事業(利用定員が6人以上であるものに限る。)の用に供する不動産(第4号の10)

 

社会福祉法人と事業税

社会福祉法人は、収益事業を行う場合についてのみ、当該収益事業から生じた所得に対して事業税が課税されます。(地方税法第72条の5第1項第2号)

収益事業の範囲は、法人税の考え方と同じです。(地方税法施行令第15条)

 

社会福祉法人と法人都道府県民税

均等割

社会福祉法人の法人都道府県民税の均等割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第25条第1項第2号)

法人税割

社会福祉法人の法人都道府県民税の法人税割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第25条第2項)

法人都道府県民税の均等割、法人税割の収益事業の範囲は、法人税の考え方と同じですが、当該収益事業の所得の90%以上を本業である社会福祉事業に充てている場合(当該収益事業の所得がなく社会福祉事業に充てられていない場合も含む)については、収益事業には含まないものとされています。(地方税法施行令第7条の4)

 

社会福祉法人と法人市町村民税

均等割

社会福祉法人の法人市町村民税の均等割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第296条第1項第2号)

法人税割

社会福祉法人の法人市町村民税の法人税割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第296条第2項)

法人市町村民税の均等割、法人税割の収益事業の範囲は、法人税の考え方と同じですが、当該収益事業の所得の90%以上を本業である社会福祉事業に充てている場合(当該収益事業の所得がなく社会福祉事業に充てられていない場合も含む)については、収益事業には含まないものとされています。(地方税法施行令第47条)

 

社会福祉法人と固定資産税

固定資産税は土地、家屋、償却資産に対して課される税金ですが、特定の用途の固定資産に対しては固定資産税が課されないことになっています。(地方税法第348条第2項)

社会福祉法人において固定資産税が非課税となる主な固定資産は以下の通りです。

  • 社会福祉法人がその設置する幼稚園において直接保育の用に供する固定資産(認定こども園の用に供する固定資産を除く。)(第9号)
  • 社会福祉法人がその設置する看護師、准看護師、歯科衛生士その他政令で定める医療関係者の養成所において直接教育の用に供する固定資産(第9号の2)
  • 社会福祉法人が保護施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの(第10号)
  • 社会福祉法人が小規模保育事業の用に供する固定資産(第10号の2)
  • 社会福祉法人が児童福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの(認定こども園の用に供する固定資産を除く。)(第10号の3)
  • 社会福祉法人が認定こども園の用に供する固定資産(第10号の4)
  • 社会福祉法が老人福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの(第10号の5)
  • 社会福祉法人が障害者支援施設の用に供する固定資産(第10号の6)
  • 第10号から第10号の6までに掲げる固定資産のほか、社会福祉法人が第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業(認定生活困窮者就労訓練事業を除く。)の用に供する固定資産で政令で定めるもの