固定資産を売却した場合の消費税の処理
消費税の納税義務者が、新しい車両を購入するために古い車両を下取りに出すなどして、固定資産を売却した場合は、非課税となる取引を除き、当該売却収入は課税売上に含める必要があります。
固定資産の売却の際の消費税の取扱いについて間違えやすいポイントを整理します。
1.固定資産売却益、固定資産売却損は消費税の計算には反映させない!
複式簿記の処理では、固定資産を売却した場合、譲渡対価と譲渡時点の当該資産の帳簿価額の差額が、固定資産売却益又は固定資産売却損として、損益計算書に計上されます。
消費税の計算をする場合、この固定資産売却益を課税売上に計上したり、固定資産売却損を課税仕入れに計上してはいけませんので注意しましょう。
2.消費税の計算は、実際の譲渡対価の額で計算する!
固定資産を売却した場合は、実際に譲渡した対価の額で課税売上(非課税となる取引を除く)に計上します。
車両の買い替えを例に考えてみましょう。
譲渡益が発生するケース:車両Aを下取りに出し、新たに車両Bを購入
- 車両Aの売却時の帳簿価額:¥500,000
- 車両Aの下取り価格:¥1,000,000
- 車両Bの購入価格:¥3,000,000
借方 | 貸方 | 摘要 |
¥1,000,000 (現金預金) | ¥500,000 (車両)
¥500,000 (車両売却益) |
車両Aの売却 |
¥3,000,000 (車両) | ¥3,000,000 (現金預金) | 車両Bの購入 |
この場合、損益計算書には車両売却益 ¥500,000が計上されますが、消費税の計算では、この車両売却益は使いません。消費税の計算上は、車両Aの売却価格 ¥1,000,000を課税売上として計算しなければなりません。
また、車両Aの下取り価格と車両Bの購入価格の差額 ¥2,000,000を課税仕入れとして計上してもいけません。
(この場合、車両Bの購入価格 ¥3,000,000は原則として課税仕入れに該当します。)
譲渡損が発生するケース:車両Cを下取りに出し、新たに車両Dを購入
- 車両Cの売却時の帳簿価額:¥2,000,000
- 車両Cの下取り価格:¥1,000,000
- 車両Dの購入価格:¥3,000,000
借方 | 貸方 | 摘要 |
¥1,000,000 (現金預金)
¥1,000,000 (車両売却損) |
¥2,000,000 (車両) | 車両Cの売却 |
¥3,000,000 (車両) | ¥3,000,000 (現金預金) | 車両Dの購入 |
この場合、損益計算書には車両売却損 ¥1,000,000が計上されますが、消費税の計算では、この車両売却損は使いません。消費税の計算上は、車両Cの売却価格 ¥1,000,000を課税売上として計算しなければなりません。
損が出ているからといって、車両売却損 ¥1,000,000を課税仕入れとして計上してはいけません。
また、車両Cの下取り価格と車両Dの購入価格の差額 ¥2,000,000を課税仕入れとして計上してもいけません。
(この場合、車両Dの購入価格 ¥3,000,000は原則として課税仕入れに該当します。)
話がそれますが、車両はよく買い替えが行われますが、旧車両の下取りと、新車両の購入は分けて処理することに注意しましょう。下取りがある場合の車両の実際の注文書などは、下取り価格を含めて一枚の注文書になっていることがあります。下取り価格を相殺した実際の支払価格で新車両のみを固定資産として計上しないように注意が必要です。
3.固定資産の売却でも、土地の売却は非課税
固定資産の売却には、建物や、構築物、器具備品、車両などがありますが、土地を売却した場合は当該土地の譲渡価格は非課税売上に該当します。
誤って課税売上に計上しないように注意しましょう。
4.簡易課税制度の適用がある場合
消費税の簡易課税制度の適用がある場合の固定資産売却収入は、第四種事業(みなし仕入率60%)に該当します。
譲渡先が事業者だからといって第一種事業(卸売業:みなし仕入率90%)に計上することや、譲渡先が一般消費者だからといって第二種事業(小売業:みなし仕入率80%)に計上することはできませんので注意しましょう。これらの処理は、あくまで棚卸資産を譲渡した場合です。
固定資産は本来、あくまで自己で使用するために購入するものであり、売却して利益を得ることを目的としていないものであることから、その他の事業である第四種事業に該当します。
<編集後記>
今週は毎日お客様を訪問予定です。
ずいぶん暖かくなってきました。今日はとても良い天気で暖かかったのですが、風が強くて花粉が。。。
長男は今日が幼稚園の終業式で、明日から春休みです。4月から年中になります。あっという間です。