土地改良区/土地改良施設の指定正味財産の部の計上科目

 

土地改良区が所有する土地改良施設の財源に公費が入っている場合、その土地改良施設が国や都道府県からの譲与により取得した施設なのか、土地改良区が補助事業により造成した施設なのかにより、指定正味財産の部の科目が異なります。

公費が入っているという点だけに着目し、施設の所有原因を考慮せずに公費負担分相当額について、指定正味財産の科目をすべて「受取補助金等」として処理したり、または「所有土地改良施設受贈益」として処理しないように注意が必要です。

1.施設の所有原因により貸借対照表の指定正味財産の部の計上科目が異なる

土地改良区に所有権がある土地改良施設は、「所有土地改良施設」として貸借対照表の特定資産の部に計上しますが、同じ土地改良施設であっても、国や都道府県等から譲与された結果として所有している施設なのか、土地改良区が補助事業等により造成した施設なのかにより、貸借対照表の指定正味財産の部の計上科目が以下の通り異なります。

  • 譲与により所有している土地改良施設の指定正味財産の部の科目・・・(款)指定正味財産(項)所有土地改良施設受贈益
  • 補助事業等により土地改良区が造成した土地改良施設の指定正味財産の部の科目・・・(款)指定正味財産(項)受取補助金等

どちらも公費が入っているという点では一緒ですが、施設の造成主体が異なります。

譲与施設は国や都道府県が主体となって造成した施設であり、補助事業等により造成した施設はあくまで土地改良区が主体となって造成した施設です。(土地改良区が事業費総額を負担し、国や都道府県が当該事業費に補助をするという形態)

公費が入っているという点だけに着目し、施設の所有原因を考慮せずに公費負担分相当額について、指定正味財産の科目をすべて「受取補助金等」として処理したり、または「所有土地改良施設受贈益」として処理しないように注意が必要です。

 

2.譲与により所有している土地改良施設の貸借対照表の科目

譲与により所有している土地改良施設の貸借対照表の科目は以下の通りです。

  • 事業費総額・・・(款)固定資産 特定資産(項)所有土地改良施設
  • 公費負担分・・・(款)指定正味財産(項)所有土地改良施設受贈益

国や都道府県等から無償でもらったという意味で、「所有土地改良施設受贈益」の科目を使用します。

指定正味財産の所有土地改良施設受贈益は、減価償却費と比例させて一般正味財産へ振り替えていくことになります。

 

3.補助事業等により土地改良区が造成した施設の場合

補助事業等により所有している土地改良施設の貸借対照表の科目は以下の通りです。

  • 事業費総額・・・(款)固定資産 特定資産(項)所有土地改良施設
  • 公費負担分・・・(款)指定正味財産(項)受取補助金等

国や都道府県等からの補助金は、指定正味財産の「受取補助金等」として一旦指定正味財産に計上し、減価償却費と比例させて一般正味財産へ振り替えていくことになります。(一般正味財産への振替額の計算方法は「所有土地改良施設受贈益」と一緒です。)

公費が補助金であれば(目)受取補助金の科目を使用し、助成金であれば(目)受取助成金を使用し、例えば適正化事業であれば、(目)受取交付金を使用します。

ただし、適正化事業は維持管理事業であるため、原則として使用することはないと考えられます。(適正化事業が資本的支出に該当する場合のみ使用)

 

4.公費なしで土地改良区が造成した施設の場合

譲与でもなく、補助金等ももらわずに公費なしで土地改良区が独力で造成した土地改良施設については、指定正味財産の部の処理はありません。事業費総額を(款)固定資産 特定資産(目)所有土地改良施設 として計上します。

 

5.まとめ

以上を表にまとめると以下のとおりです。

 

 

<編集後記>

国が整備した「土地改良施設の資産評価マニュアル」に基づいた土地改良施設台帳は、公費負担分について、「所有土地改良施設受贈益」として計上するものなのか、「受取補助金等」として計上するものなのか、一見して分からないのですが、土地改良施設台帳はExcel形式で各土地改良区へ納品されているため、「造成主体」の項目をExcelのフィルター機能で抽出して計算することができます。

この点は一見してわかるようにすべきだったと思います。他にも、当期減価償却費が一見して分からない(前年度の台帳と当年度の台帳で引き算をする必要がある)、公費負担分が一見して分からない(「全体」からうち「土地改良区負担分」を引くことで計算することができる)など、一般的な会計帳簿としての固定資産台帳としては不親切な様式だと思います。

また、私が知る限り、土地改良区向けの会計ソフトもこのExcelをそのまま取り込んで使用する形式となっているようで、会計ソフトとしては、最低でも上記の管理くらいはできるようにすべきなのではないかと思っています。

この点について関与先の土連さんや土地改良区さんとよく話題になっています。。。