学校法人/学校法人は税金を払う必要があるの?

学校法人を取り巻く主な税金の納税義務について整理しました。
学校法人は一般企業とは異なり、法人税をはじめ多くの税目で優遇措置が講じられています。
なお、内容をできるだけわかりやすくするため、説明を簡略化しています。実際に優遇措置等を受ける際には、必ず最新の法令・通達をご確認いただくか、関与税理士等にご相談ください。
学校法人と法人税
学校法人は公益法人等に該当し、法人税法上の収益事業を行う場合に限り、当該収益事業から生じた所得に対して法人税が課税されます(法人税法第4条1項)。
ここでいう収益事業とは、私立学校法第19条で定める収益事業ではなく、法人税法第2条1項13号で定める収益事業のことをいいます。(私立学校法上の収益事業と法人税法上の収益事業が必ずしも一致する訳ではありません。)
法人税法の収益事業には、例えば、物品販売業、不動産貸付業などがあり、34業種が定められています。(法人税法施行令第5条)
ポイント
同じ「収益事業」という名称でも、私立学校法上の収益事業と法人税法上の収益事業は異なります。私立学校法で収益事業に該当しても法人税がかからないケース、逆に私立学校法上は収益事業に該当しなくても法人税がかかるケースがあります。
学校法人と消費税
学校法人は消費税法上の事業者に該当するため、原則として消費税の納税義務があります(消費税法第5条1項)。
ただし、基準期間(基本的に2事業年度前のこと)の課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者である場合には、別段の定めがある場合を除き、消費税の納税義務が免除されています。(消費税法第9条1項)
一方で、授業料・入学検定料・入学金・施設設備費・在学証明等の手数料・検定済教科用図書の譲渡など、学校教育に係る主要な対価の多くは非課税です。(消費税法第6条、同法別表第一、基本通達6-11(学校教育関係)関連)
そのため、学校法人は消費税の課税売上が相対的に小さくなりやすい点に留意します。
学校法人と印紙税
学校法人の印紙税については、基本的に一般企業と同じ扱いですが、学校法人が発行する領収書は営業に関しない受取書に該当するため非課税です。(印紙税法 別表第一 課税物件表 17号文書)
学校法人と登録免許税
学校法人の設立等の登記
学校法人の設立等の登記については、登録免許税法別表第一に掲げられていないため登録免許税は課されません。
学校法人の不動産の登記
学校法人の以下に掲げる不動産の登記については、登録免許税は課されないことになっています。(登録免許税法第4条第2項、別表第三)
- 校舎、寄宿舎、図書館その他保育又は教育上直接必要な附属建物(…校舎等)の所有権の取得登記
- 校舎等の敷地、運動場、実習用地その他の直接に保育又は教育の用に供する土地の権利の取得登記
- 自己の設置運営する保育所もしくは家庭的保育事業、小規模保育事業もしくは事業所内保育事業の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育の用に供する土地の権利の取得登記
- 自己の設置運営する認定こども園の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記
なお、これらの登録免許税について非課税の適用を受けるためには、所轄庁が発行する証明書の提出が必要です。
学校法人と不動産取得税
学校法人が以下の用途で使用するために取得した不動産には、不動産取得税は課されないことになっています。(地方税法第73条の4第1項)
- 直接保育又は教育の用に供する不動産(第4号の4に該当するものを除く)(第3号)
- 寄宿舎で学校又は専修学校に係るものにおいて直接その用に供する不動産(第3号)
- 認定こども園の用に供する不動産(第4号の4)
学校法人と事業税
学校法人は、収益事業を行う場合についてのみ、当該収益事業から生じた所得に対して事業税が課税されます。(地方税法第72条の5第1項第2号)
収益事業の範囲は、法人税の考え方と同じです。(地方税法施行令第15条)
学校法人と法人都道府県民税
均等割
学校法人の法人都道府県民税の均等割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第25条第1項第2号)
法人税割
学校法人の法人都道府県民税の法人税割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第25条第2項)
法人都道府県民税の均等割、法人税割の収益事業の範囲は、法人税の考え方と同じですが、当該収益事業の所得の90%以上を本業である私立学校、私立専修学校又は私立各種学校の経営に充てている場合(当該収益事業の所得がなく当該経営に充てられていない場合も含む)については、収益事業には含まないものとされています。(地方税法施行令第7条の4)
学校法人と法人市町村民税
均等割
学校法人の法人市町村民税の均等割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第296条第1項第2号)
法人税割
学校法人の法人市町村民税の法人税割は収益事業を行う場合に限り課されます。(地方税法第296条第2項)
法人市町村民税の均等割、法人税割の収益事業の範囲は、法人税の考え方と同じですが、当該収益事業の所得の90%以上を本業である私立学校、私立専修学校又は私立各種学校の経営に充てている場合(当該収益事業の所得がなく当該経営に充てられていない場合も含む)については、収益事業には含まないものとされています。(地方税法施行令第47条)
学校法人と固定資産税
固定資産税は土地、家屋、償却資産に対して課される税金ですが、特定の用途の固定資産に対しては固定資産税が課されないことになっています。(地方税法第348条第2項)
学校法人において固定資産税が非課税となる主な固定資産は以下の通りです。
- 学校法人がその設置する学校において直接保育又は教育の用に供する固定資産(第十号の四に該当するものを除く。)(第9号)
- 学校法人がその設置する寄宿舎で直接その用に供する固定資産(第9号)
- 学校法人が認定こども園の用に供する固定資産(第10号の4)
まとめ
法人税:収益事業を実施する場合に限り、当該収益事業の所得に対して課税
消費税:納税義務者に該当する場合は課税
印紙税:基本的に一般企業と同じ扱いだが学校法人が発行する領収書は非課税
登録免許税:教育に直接必要な不動産等の登記は非課税(証明書必要)
不動産取得税:直接教育の用に供する不動産等は非課税
事業税・法人住民税:法人税と同様(90%以上本来事業充当の特例に留意)
固定資産税:教育の用に供する固定資産は非課税(用途外部分は課税)