土地改良区/員外監事の運用について(平成30年改正土地改良法)

 

平成30年6月8日に公布された改正土地改良法(平成30年法律第43号)では、土地改良区の財務会計制度の見直しの一つとして、員外監事の選任が求められることになりました。

この改正は、今までの身内(組合員)による監査では監査機能が十分に機能しているとはいえないため、第三者の立場からの監査を行うことを義務付け、土地改良区において不祥事が発生しないよう、監査機能を強化することが目的であると考えられます。

今回の土地改良法の改正で新たに規定された員外監事の制度について整理します。

 

1.員外監事の要件

員外監事に関することは、改正土地改良法第18条第6項に規定されています。

簡単に要約すると、監事のうち1人以上は、次の全ての要件を満たす必要があります。

  • その土地改良区の組合員でないこと。(組合員が法人等の場合は、その法人等の役員や職員も不可。)
  • 5年以内にその土地改良区の理事又は職員でなかったこと。
  • 理事又は重要な使用人(※)の配偶者又は二親等以内の親族ではないこと。

(※)重要な使用人とは、土地改良区の職員のうち、事務の執行にあたり専決事項を有するなどの重要な地位を占める者をいい、具体的には、事務局長、参事、総務部長等のこと。

また、二親等以内の親族については次のとおりです。意外と範囲が広いので注意が必要です。

 

要は、監事のうち1人以上はその土地改良区に関与していない第三者であるということが必要です。

参考までに、改正土地改良法第18条6項の条文を載せておきます。

 

(役員の選任等)

第十八条 土地改良区に、役員として、理事及び監事を置く。

6 土地改良区の監事(設立当時の監事を除く。)のうち一人以上は、次に掲げる要件の全てに該当する者でなければならない。ただし、土地改良区の業務及び会計についての監査に関し専門的知識を有する者の指導を受ける場合その他の農林水産省令で定める場合は、この限りでない。

一 当該土地改良区の組合員等又は当該土地改良区の組合員等たる法人若しくは団体の役員若しくは使用人以外の者であること。

二 その就任の前五年間当該土地改良区の理事又は職員でなかつたこと。

三 該土地改良区の理事又は重要な使用人の配偶者又は二親等内の親族以外の者であること。

 

 

2.員外監事を設置しなくてもよい場合

改正土地改良法第18条第6項ただし書きで、員外監事を設置しなくてもよい場合が規定されています。

(1)専門的知識を有する者の指導を受ける場合

次のような場合は、員外監事の選任は不要です。

  • 公認会計士(又は監査法人)との間で監査業務契約や顧問契約を締結している場合
  • 税理士(又は税理士法人)との間で顧問契約を締結している場合
  • 都道府県土地改良事業団体連合会との間で外部監査契約を締結している場合

このような場合は、第三者の観点からチェックが入るため、員外監事の設置を不要としたと考えられます。

 

(2)土地改良区連合を設立している場合の所属土地改良区

土地改良区の会計事務を行うために土地改良区連合を設立している場合、その所属している土地改良区の監事には、員外監事を設置しなくてもよいとされています。

ただし、この場合は土地改良区連合において員外監事の設置が必要です。

なお、土地改良区連合において、(1)の対応をする場合には、土地改良区連合においても員外監事の設置は不要なのでしょう。

 

3.員外監事の選任の期限

1.の改正土地改良法の員外監事に関する規定は、改正土地改良法附則第3条において、施行日(平成31年4月1日)から起算して4年を経過した日以後最初に招集される通常総会の終了の時までは適用しないとされています。

そうすると(ここからはあまり自信はありませんが。。。)、令和5年4月1日以後最初に開催される通常総会(恐らくほとんどの土地改良区は令和6年2月、3月頃?)までには、員外監事を専任しておくことが必要ではないかと。

 

また、監事の任期も関係してくると思いますので、適用期限が監事の任期の途中となる場合は、実際の適用期限よりも前に員外監事を専任することが必要でしょう。

 

4.員外監事の選任に関する実際の運用

監査機能を強化することが目的の員外監事の制度ですが、実際に要件を満たす員外監事をどのように見つけてくるか、ということが課題になると思います。

先日の研修会で本省の方は、例えば、近隣の土地改良区の組合員などに員外監事として就任してもらうことも選択肢としてある、と説明していました。

員外監事の要件を改めてみてみると、次のように考えることもできます。

  • その土地改良区の組合員でないこと。 → 他の土地改良区の組合員が員外監事になることは制限していない。
  • 5年以内にその土地改良区の理事又は職員でなかったこと。 → 過去にその土地改良区の理事又は職員であった場合でも、辞めてから5年超であれば員外監事に就任しても問題はない。
  • 理事又は重要な使用人の配偶者又は二親等以内の親族ではないこと。 → その土地改良区の理事又は重要な使用人以外(例えば、組合員や職員)の配偶者や親族であれば員外監事に就任しても問題はない。

小規模な土地改良区などについては、このような対応もあり得ると思います。

ただし、個人的には、規模の大きな土地改良区や資金に体力のある土地改良区については、率先して本質的に自浄能力を高めるための仕組みづくりを進めていくことが必要なのではないかと思います。

また、それが結果的には土地改良区の現在の制度(税制の優遇措置など)や組織を守ることにつながるとも思います。

 

 

【参考】

  • 土地改良法(平成三十年法律第四十三号)
  • 土地改良法の一部を改正する法律の概要(平成30年6月 農林水産省)
  • 土地改良法施行規則の一部を改正する省令の概要(平成30年10月 農林水産省)
  • 改正土地改良法の運用について(平成30年10月 土地改良企画課)

 

 

【編集後記】

冒頭の写真は、北海道美瑛町の青い池に2018年8月に行った時の写真です。

あえて混まないだろうという平日を狙って行ったのですが、外国人だらけでした。。。まるで日本ではないような状況でした。

写真の通り、池の水がきれいな水色でした。

 

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