土地改良区/収支決算書の資金の範囲

 

平成31年2月に新たな土地改良区会計基準(30農振第2938号)が制定されましたが、新たな土地改良区会計基準に移行するにあたって、収支決算書の資金の範囲を決める必要があります。

関与している土地改良区さんや連合会さんを通して、出納整理期間や収支計算外出納に関するご質問が多いので、私が考える現実的な収支決算書の資金の範囲2パターンについて整理します。

 

1.収支決算書の資金の範囲とは

収支決算書の資金の範囲とは、収支計算上、「何をお金として扱うか」ということです。

一般論(常識)では、当たり前ですが「現金及び預金」のことを指しますし、今までの土地改良区の収支決算書においても一般論と同じで、「現金及び預金」を資金の範囲としているはずです。(わざわざこんなことは意識はしていないと思います。)

つまり、現実のお金が入金された時に収入として扱い、現実のお金が出金された時に支出として扱います。

ただし、収支決算書の資金の範囲を「現金及び預金」としてしまうと、例えば事業年度の締日である3月31日までに入金されなかった当該事業年度に所属させるべき補助金収入や、同じく3月31日までに支払いがされなかった当該事業年度に所属させるべき工事費支出などが当該年度の収支決算書に含まれないため、「予算と決算の対比」という収支決算書の本来の役割が果たせないことになってしまいます。

そこで、「出納整理期間」が登場します。

出納整理期間を設けることにより、出納整理期間内に決済された当該事業年度に所属させるべき収入及び支出を収支決算書に含めることができます。

今までの土地改良区の収支決算書は、「現金及び預金を資金の範囲とし、出納整理期間がある」ということが大きな特徴です。

 

2.新たな土地改良区会計基準における収支決算書の資金の範囲

新たな土地改良区会計基準に移行した後の収支決算書の資金の範囲はどうするべきでしょうか。

土地改良区会計基準には、この点について明記はされておらず、土地改良区においてどのようにするか選択する必要があります。

考えられる収支決算書のパターンは複数ありますが、土地改良区が現実的に選択できる収支決算書のパターンは、私が考える限り、次の2通りです。

  • 資金の範囲を「現金及び預金」とし、出納整理期間(資金収支整理期間)を設けるパターン
  • 資金の範囲を「流動資産及び流動負債」とするパターン

 

3.資金の範囲を「現金及び預金」とし、出納整理期間(資金収支整理期間)を設けるパターン

この方法は、今までの収支決算書の考え方をそのまま引き継ぎます。

新たな土地改良区会計基準においては、「出納整理期間」というものはありませんが、出納整理期間と実務上同じ意味の「資金収支整理期間」(翌年度5月31日まで)内に決済された当該事業年度に所属させるべき収入及び支出を収支決算書に含めて処理する方法です。

この場合、預り金などの収支計算外出納の考え方も踏襲します。

 

4.資金の範囲を「流動資産及び流動負債」とするパターン

この方法は、社会福祉法人会計基準において採用されている方法です。

資金の範囲を広げ、流動資産を「プラスのお金」、流動負債を「マイナスのお金」として扱います。(1年基準で固定項目から流動項目に振り替えられたものや、貯蔵品などの棚卸資産、賞与引当金などは除きます。)

つまり、未収金などはプラスのお金として扱い、未払金などはマイナスのお金として扱う、ということです。

未収金を計上した時点で、まだお金は入っていないものの、お金が入った(収入)として考え、未払金を計上した時点で、まだお金は支払っていないものの、お金を支払った(支出)として考える、ということです。

この場合、収支決算書の繰越金は貸借対照表の(流動資産△流動負債)と原則として一致し、近未来のお金を表すことになります。

 

この方法による場合で、例えば補助金の一連の仕訳を示すと次の通りです。

  • 3月31日に補助金の交付決定通知(金額:100,000円)に基づき、補助金を未収計上する
    • 複式仕訳:¥100,000(未収補助金)/(補助金収入)
    • 収支仕訳:¥100,000(支払資金)/(補助金収入)※未収補助金は資金であるため収入扱い
    • 命令書:¥100,000の収入命令

 

  • 4月30日に上記補助金が入金された
    • 複式仕訳:¥100,000(現金預金)/(未収補助金)
    • 収支仕訳:¥100,000(支払資金)/(支払資金)※両方とも資金であるため動きなし
    • 命令書:¥100,000の振替命令

 

このように、実際にお金は入っていないものの、未収補助金は流動資産であるため「お金」として扱うことで、予算と決算の対比を図ることができます。

 

また、源泉所得税預り金などの収支計算外出納については、考慮不要です。

例えば、源泉所得税の一連の仕訳を示すと次の通りです。

  • 3月25日に給料から10,000円の所得税を天引きした
    • 複式仕訳:¥10,000(現金預金)/(預り金)
    • 収支仕訳:¥10,000(支払資金)/(支払資金)※両方とも資金であるため動きなし
    • 命令書:¥10,000の振替命令

 

  • 4月10日に預かった10,000円の所得税を税務署へ納付した
    • 複式仕訳:¥10,000(預り金)/(現金預金)
    • 収支仕訳:¥10,000(支払資金)/(支払資金)※両方とも資金であるため動きなし
    • 命令書:¥10,000の振替命令

 

このように、預り金は流動負債で資金として扱われ、相手科目の現金預金も当然資金として扱われるため、収支決算書には表現されず、収支計算外出納と同じ結果になります。

 

この方法では、出納整理期間(資金収支整理期間)や収支計算外出納を設ける必要はなく、未収金や未払金の計上により収入・支出扱いとできるため、予算と決算の対比も可能です。

また、従来の方法では出納整理期間まで帳簿を締めることができませんが、この方法によれば未収金や未払金の計上により収支決算書も締めることができるため、決算を早めに終わらせることができるでしょう。

 

この方法による課題としては、私が考える限り、次の事項が挙げられます。

  • 「収入」や「支出」の定義に慣れるまでに時間がかかる(収入命令、支出命令のタイミングが今までと異なる)
  • この方法に対応できる会計ソフトの選定が必要(公益法人会計向けのソフトで代用は十分可能)
  • 未収賦課金(流動資産)を長期未収賦課金(固定資産)に振り替えた場合の収支決算書の扱い(支出扱いにするか)

 

収支決算書の論点はまだ色々とありますが、今日はここまでです。