土地改良区/賦課金の一連の会計処理について

 

土地改良区の賦課金の賦課調定から不納欠損までの一連の会計処理について整理しました。

なお、勘定科目は土地改良区会計基準(農振第2938号 平成31年2月14日)別表第1により選定しています。また、財務諸表等作成要領も合わせて参考にしてください。

 

1.賦課金の調定時の会計処理

  • 取引例:令和4年8月1日に組合員1,000名に対し、経常賦課金1,000,000円の調定をした。
  • 命令書:振替命令書
  • 収支仕訳:動きなし
  • 複式簿記仕訳:
    • 金額:1,000,000円
    • 借方:(款)流動資産 (項)未収賦課金等 (目)未収経常賦課金
    • 貸方:(款)土地改良事業収入 (項)経常賦課金
  • 解説:
    • 賦課金は賦課調定時に金銭を徴収する権利が生じるため、原則として賦課調定時に要徴収額を未収賦課金として計上します。
    • 金銭のやり取りはないため、振替命令書を起票します。
    • 金銭のやり取りはないため収支決算書は動きませんが、正味財産増減計算書において当年度の賦課金の要徴収額である1,000,000円が収益として計上され、同時に貸借対照表に資産として「未収経常賦課金」1,000,000円が計上されます。
    • 上記の処理が原則ですが、例外処理として、賦課調定時には会計処理をせず、賦課金の入金の都度、(借方)現金及び預金(貸方)経常賦課金 という処理を行い、決算処理で未入金の賦課金を未収経常賦課金として計上する方法でも構いません。

 

2.賦課金が年度内に入金された時の会計処理

  • 取引例:上記1.で賦課調定した経常賦課金1,000,000円について、令和4年9月30日に口座振替を行い、990,000円が入金された。
  • 命令書:収入命令書
  • 収支仕訳:
    • 収入金額:990,000円
    • 収入科目:(款)土地改良事業収入 (項)経常賦課金収入
  • 複式簿記仕訳
    • 金額:990,000円
    • 借方:(款)流動資産 (項)現金及び預金
    • 貸方:(款)流動資産 (項)未収賦課金等 (目)未収経常賦課金
  • 解説:
    • 賦課金が入金されたため、収入命令書を起票します。
    • 収入命令書に基づき、収支決算書には経常賦課金収入990,000円が計上されます。
    • 複式簿記では、1.で計上された債権1,000,000円のうち990,000円が回収されたため、未収経常賦課金990,000円が減少し、代わりに現金及び預金が990,000円増加したという仕訳をします。
    • この結果、貸借対照表上の未収経常賦課金の残高は10,000円になります。

 

3.翌年度期首(4月1日)の未収賦課金の会計処理

  • 取引例:上記1.で賦課調定した経常賦課金1,000,000円のうち、令和5年3月31日までに入金されなかった経常賦課金10,000円について、翌年度期首(令和5年4月1日)において長期未収賦課金等に振り替える。
  • 命令書:振替命令書
  • 収支仕訳:動きなし
  • 複式簿記仕訳:
    • 金額:10,000円
    • 借方:(款)その他固定資産 (項)長期未収賦課金等 (目)経常賦課金
    • 貸方:(款)流動資産 (項)未収賦課金等 (目)未収経常賦課金
  • 解説:
    • 年度末までに回収できなかった未収経常賦課金は、翌年度の期首(4月1日)において流動資産の未収経常賦課金から固定資産の長期未収賦課金等に振り替え、別途債権管理をすることになります。
    • この結果、貸借対照表上の長期未収賦課金等の残高は10,000円になります。(流動資産の未収経常賦課金の残高は0になります。)

 

4.賦課金が年度を超えて入金された時の会計処理(資金収支整理期間内に入金された場合)

  • 取引例:令和4年度の経常賦課金で年度末までに入金されなかった10,000円のうち、3,000円が翌年度の令和5年4月30日に入金された。なお、当土地改良区では、賦課金が資金収支整理期間(旧:出納整理期間)内に入金された場合には、前年度(令和4年度)の収入として扱うこととしている。
  • 命令書:収入命令書
  • 収支仕訳:
    • 収入金額:3,000円
    • 収入科目:(款)土地改良事業収入 (項)経常賦課金収入 ★令和4年度の収入
  • 複式簿記仕訳:
    • 金額:3,000円
    • 借方:(款)流動資産 (項)現金及び預金
    • 貸方:(款)その他固定資産 (項)長期未収賦課金等 (目)経常賦課金
  • 解説:
    • 賦課金が入金されたため、収入命令書を起票します。
    • 収入命令書に基づき、収入3,000円が計上されますが、今回のケースでは、賦課金が資金収支整理期間(旧:出納整理期間)内に入金された場合には、前年度の収入とすることとしているため、令和4年度の収支決算書に経常賦課金収入3,000円が追加で計上されることになります。
    • 複式簿記では、3.で計上された長期未収賦課金等10,000円のうち3,000円が回収されたため、長期未収賦課金等3,000円が減少し、代わりに現金及び預金が3,000円増加したという仕訳をします。
    • この結果、貸借対照表上の長期未収賦課金等の残高は7,000円になります。

 

5.賦課金が年度を超えて入金された時の会計処理(資金収支整理期限後に入金された場合)

  • 取引例:令和4年度の経常賦課金で年度末までに入金されなかった10,000円のうち、4,000円が翌年度の令和5年9月30日に入金された。
  • 命令書:収入命令書
  • 収支仕訳:
    • 収入金額:4,000円
    • 収入科目:(款)雑収入 (項)過年度収入 ★令和5年度の収入
  • 複式簿記仕訳:
    • 金額:4,000円
    • 借方:(款)流動資産 (項)現金及び預金
    • 貸方:(款)その他固定資産 (項)長期未収賦課金等 (目)経常賦課金
  • 解説:
    • 賦課金が入金されたため、収入命令書を起票します。
    • 収入命令書に基づき、収入4,000円が計上されますが、今回のケースでは、賦課金が資金収支整理期間(旧:出納整理期間)を超えて入金されたため、令和4年度の収入ではなく、令和5年度の収支決算書に過年度収入として4,000円が計上されることになります。
    • この結果、貸借対照表上の長期未収賦課金等の残高は3,000円(7,000円△4,000円)になります。

 

6.未収賦課金の時効が到来し、不納欠損処分をした時の会計処理

  • 取引例:令和4年度に賦課調定した経常賦課金のうち、未収のまま時効が到来した未収賦課金3,000円について会計上の不納欠損処分を行う。
  • 命令書:振替命令書
  • 収支仕訳:動きなし
  • 複式簿記仕訳:
    • 金額:3,000円
    • 借方:(款)不納欠損 (項)不納欠損
    • 貸方:(款)その他固定資産 (項)長期未収賦課金等 (目)経常賦課金
  • 解説
    • 5.の処理後に貸借対照表上に未回収のまま残っている長期未収賦課金等3,000円について時効が到来した場合は、債権を消去する必要があります。
    • 金銭のやり取りはないため、振替命令書を起票します。
    • 金銭のやり取りはないため収支決算書は動きませんが、債権回収ができなくなったことによる損失3,000円が正味財産増減計算書に不能欠損として計上され、同時に貸借対照表の長期未収賦課金等3,000円が消去されます。
    • この結果、貸借対照表上の長期未収賦課金等の残高は0円(3,000円△3,000円)になります。

 

7.不納欠損処分後に賦課金相当額の入金があった時の会計処理

  • 取引例:上記6.で不納欠損処分をした未収賦課金3,000円のうち、1,000円が入金された。
  • 命令書:収入命令書
  • 収支仕訳:
    • 収入金額:1,000円
    • 収入科目:(款)雑収入 (項)過年度収入
  • 複式簿記仕訳:
    • 金額:1,000円
    • 借方:(款)流動資産 (項)現金及び預金
    • 貸方:(款)過年度修正
  • 解説:
    • 不納欠損処分を行った長期未収賦課金等について後日入金があった場合は、雑収入として処理します。
    • 収入命令書を起票しますが、当該収入は賦課金としては扱えないため、収支決算書には雑収入として1,000円を計上します。
    • 土地改良区会計基準 別表第1 によれば、この場合の複式簿記仕訳の収益科目としては「過年度修正」の科目により処理します。(個人的には、「雑収入」や「寄付金」の科目の方が適切なのではないかと思いますが。)

 

【参考】

  • 土地改良区会計基準(30農振第2938号 平成31年2月14日)
  • 財務諸表等作成要領

 

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