土地改良区/国債等を売却した場合の消費税の計算
土地改良区が国債や地方債などの有価証券を売却した場合、消費税の課税売上割合の計算上、その譲渡対価すべてが非課税売上となるわけではなく、譲渡対価の5%相当額が非課税売上となります。
誤った計算により、過大に納税することになる場合があるため注意が必要です。
本記事は以下に当てはまる土地改良区が関係する可能性があります。該当しない場合は関係ありません。
- 消費税の納税義務がある
- 消費税を原則計算により申告している(簡易課税制度の適用を受けていない)
土地改良区の消費税の納税義務については以下の記事で解説しています。
なお、内容をできるだけわかりやすくするため、説明を簡略化しています。実際の消費税の計算にあたっては、法令をご確認頂くか関与税理士に確認をお願いします。
1.課税売上割合
課税売上割合は以下の方法より計算します。
課税売上割合=(課税売上高)/(課税売上高+免税売上高+非課税売上高)
ここで、土地改良区の課税売上高には、例えば、業務受託料、督促手数料、調査手数料、他目的使用料(土地等の貸付を除く)、売電収入などが該当します。
土地改良区の課税売上については以下の記事で解説しています。
免税売上高とは、輸出関連取引のことを指しますが、土地改良区の場合は発生することはないでしょう。
非課税売上高には、他目的使用料(土地等の貸付の場合)、預金利息、公債利息、公債の売却収入などが該当します。
ここで注意しなければならないのは、公債等の有価証券を売却した場合です。公債等の有価証券の譲渡対価は非課税売上に該当しますが、課税売上割合の計算上、その譲渡対価の5%相当額を非課税売上高として計算する必要があります(消費税法施行令48⑤)。
例えば、帳簿価額9,000万円の国債を満期日前に1億円で売却した場合、1億円のすべてが非課税売上となるわけではなく、譲渡対価1億円×5%=5百万円を非課税売上として計算します。
ただし、これはあくまで課税売上割合の計算上だけです。
2.特定収入割合
特定収入割合は以下の方法により計算します。
特定収入割合=(特定収入の合計額)/(課税売上高+免税売上高+非課税売上高+国外売上高+特定収入の合計額)
公債等の有価証券の売却があった場合、特定収入割合の分母の非課税売上高は、課税売上割合の計算のように譲渡対価×5%の計算はしません。あくまで譲渡対価そのままの額で計算します。
この特定収入割合が5%を超えると仕入税額控除の特例計算(消費税法60④)をする必要があります。
土地改良区は賦課金をはじめ補助金や助成金などの特定収入が多いため、ほとんどの土地改良区は特定収入割合が5%を超えるのではないかと思われます。
3.調整割合
調整割合は以下の方法により計算します。
調整割合=(使途不特定の特定収入)/(課税売上高+免税売上高+非課税売上高+国外売上高+使途不特定の特定収入)
公債等の有価証券の売却があった場合、調整割合の分母の非課税売上高は、課税売上割合の計算のように譲渡対価×5%の計算はしません。あくまで譲渡対価そのままの額で計算します。
4.まとめ
各計算における有価証券の譲渡対価の計算方法は以下の通りです。
計算内容 | 有価証券の譲渡対価の非課税売上高への算入額 |
課税売上割合 | 譲渡対価×5% |
特定収入割合 | 譲渡対価 |
調整割合 | 譲渡対価 |
積立金の財源として国債等の有価証券を保有しているような土地改良区は注意が必要です。
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